第18章

翌日、大島莉理は会社で波風ひとつ立たない一日を過ごした。けれど夕方、田中尚哉から食事の誘いが届く。

少し考えてから、彼女は素直に応じた。

田中尚哉は店をまるごと貸し切っていた。ステーキに赤ワイン、花、音楽。店内は甘い空気で満ちている。

彼はスーツでかっちり決めているのに、大島莉理はラフな服にスニーカー。正反対の格好だった。

それでも田中尚哉は眉ひとつ動かさない。椅子を引き、短く言った。

「座れ」

向かい合って腰を下ろすと、田中尚哉が手品みたいに花束を差し出した。

ブルーローズ。

彼女がいちばん好きな花。海みたいに透き通った青――のはずなのに、今の胸は不思議なくらい凪いでいる。...

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